『地球に住めなくなる日』環境問題なくしてアフターコロナは語れない。

英国の分析によれば、新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停滞する中、今年の世界の温室効果ガス排出量は過去最大の減少を記録する見込みとなるようだ。

2020年は前年比5.5%減少する見通しで、年間減少率としては大恐慌第二次世界大戦などを上回る過去最大となるようであるが、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の目標達成はなおも困難であるとの見解を示している。

それは、温室効果ガスの排出量は経済活動に密接な相関関係があるためで、コロナによる経済活動の自粛が終息し経済活動が再開されれば排出量も再び増加に転じることは自明であり、「現在の危機は排出量を一時的に減らすだけかもしれない」との懸念は至極まっとうなものである。

 

本書は、こうした地球温暖化による気候崩壊に関する人類へ向けた最終警告である。

最終警告?産業革命以降、我々人類は地球温暖化による警告を一体何度受けてきたというのだろうか(うんざりするほどだ)。

どうやら私たちは悪い話をいつの間にか「ふつう」に薄めてしまうのが異常なほどうまいらしい。

それでは、まずは我々が「ふつう」に薄め、直視することを恐れてきた現実を振り返ることから始めてみよう。

 

2016年パリ協定は平均気温の上昇幅を2℃までと定めた。

この上昇幅2℃というのは、氷床融解が現実になり上海や香港など世界の100都市あまりが水没する、その分かれ目にあたる。

上昇幅が4℃〜5℃ともなれば、世界が慢性的な食糧不足に陥り、地球全体が生命が住むには適さない環境となる。

では、パリ協定の目標達成が困難と言われる中、近い将来どれくらい温度が上がるのだろうか。

本書では、我々は2100年までに平均気温が4℃上昇する未来に向かって猛烈な勢いで進んでいるという(これでも控えめに予測してだ)。

上昇幅4℃というのは、地球全体が住むには適さない環境と言われるあの上昇幅だ。

しかもそれは2100年というまだまだ先の話ではない。

気候崩壊はすでに始まっている。それが我々人類に突きつけられた現実なのだ。

 

日本においても記録的な災害が皆さんの記憶にも新しいことだろう。

2018年7月西日本豪雨で約120万人に避難勧告が出され、2019年には台風15号と19号が千葉県内に大規模停電をはじめとする損害を与えた。

「〇〇年に一度の災害」という言葉はもはや日常で聞かれる言葉になりつつある。

それは日本だけではなく、世界中で同様のことが起こっている。

私たちはこうした災害は、何百年も前の産業革命開始から徐々に積み上がってきたツケを、いま自分たちが払わされていると思っている。

しかしそれは大きな勘違いだ。

本書によれば、現在、大気中に放出されている二酸化炭素のうち約半数以上は、この30年に発生したものが占めているという。

これはかの有名なアメリカ元副大統領アル・ゴアが「不都合な真実」と題した気候変動に関する本を出版した後の、今生きている私たちの仕業だということだ。

私たちは良くないこととわかった上で、何も知らなかったころと同じように環境破壊を続けているのだ。

 

新型コロナウイルスの感染拡大対策として、アメリカでは大都市のロックダウン政策が実施された。

ある報道では、政策の実施を受けて、アメリカではたった6週間ほどで5000万人を超える人たちが仕事を失ったと報じられた。

これはアメリカ全体の就労人口約1億5000万人に対し、3分の1にあたる驚異的な数である。

こうしたロックダウン政策による経済効果によって、世界は1930年代に起きた大恐慌にも似た状況へ突き進む可能性がある。

世の賢明な人たちは、アフターコロナにおいてこのような懸念を抱いている。

だがそうした懸念により経済回復を優先すべく環境破壊の容認を許すべきではない。

アフターコロナは環境問題なくして語れない。本書は全人類必読の書だ。

 

地球に住めなくなる日: 「気候崩壊」の避けられない真実