『発酵野郎!』令和時代の学びとビジネスはこの男から学ぶべきだ。

本書はビール事業に参入したある男のサクセスストーリーである。

 

起業家というものは、情熱をもった野心家であり、独創的で時には無謀な男たちのことをいう。

しかし、この男は無謀というよりはただのバカなのでは?と思ってしまう。

90年代、実家の餅屋が法人化して間もないころ、当時の年商の2倍以上、2億円もの金額を投げうちビール事業に参入した。

ビール事業もど素人なら、飲食店経営もど素人のこの男。そんな状態でまともに利益をあげることなどできるはずもなく、赤字を垂れ流す日々。血尿が出て、幻覚さえみる地獄の日々が始まった。

 

そんな自信もカネもなくなった著者を激励してくれたのが、とある勉強会で出会った今は亡き経営者の河中宏さんだった。

「あなたは必ずいつか成功する人や。あなたに足りないのは自らを過信することや」

河中さんは、スイッチ技術を自動車向けに応用して、地方の中心メーカーから世界20ヵ所に拠点を置くグローバル企業に成長させた功労者で、個人資産100億円ともいわれている方だ。この言葉に著者の中で何かが変わり始める。

 

先述したとおり、著者の実家は戦国時代創業の餅屋さん。

まだ織田信長徳川家康武田勝頼と合戦をしていた時代だ。

そんな男がビール事業を始めたのは、安定した家業の傍ら、せいぜい小銭稼ぎ程度に始めたんだろうくらいに思うだろう。

たしかに、その理由もあるだろうがこの男が事業を始めた理由はもっと大人げない理由があるからだ。

それは大学時代に熱中した微生物研究をビール事業ならまた始められると思ったからだそうだ。

真面目なんだかふざけているのか始末に負えない理由である。

 

世界一のビールをつくるには、世界一のビールを決めている人に自分もなればいいんじゃないか?

このナイスな思い付きで、著者は地ビールの審査員の資格を本当に取得してしまう。

しかも、アメリカの有名なビアコンテストの審査員を頼まれ、当時英語がまともにできなかったのに、「鈴木さん、英語できる?」のお誘いに「大丈夫です」の二つ返事で答えた。

もちろん、英語は審査員を引き受けてからひたすら勉強したそうだ。

 

こんなペースで数多くの失敗を繰り返しながらも、着実に成長していく。

いや、むしろ数多くの笑い話と逸話が誕生していくとでも言おうか。

河中さんや他の経営者も著者に目を付けたように、この男の好きなものへの情熱、リスクを恐れない態度、失敗から学ぶ姿勢は目を見張るものがある。

 

令和の時代の学びとビジネスはこの男を見習わなければ始まらない。

本書は情熱をもちたいすべての人にお勧めの本だ。

 

発酵野郎!: 世界一のビールを野生酵母でつくる

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