『恐竜の世界史――負け犬が覇者となり、絶滅するまで』恐竜視点で描く「絶滅の日」とは

今は、「恐竜化石の大発見時代」だ。次々と新種が報告されており、恐竜の歴史は大きく書き換えられてきた。

 

 

一昔前、私たちが想像する恐竜といえば、トカゲやワニといった爬虫類によく似た姿を想像していたが、今では恐竜は鳥類の祖先と考えられ、ティラノサウルスには羽毛が生えていた。

今まさに、新たな世代の研究者たちがかつてない勢いで恐竜の化石を採集し、週に一度のペースで新種が発見されている。

著者は、多くの研究者の中でも、世界各地で発掘調査を行い、15種もの新種を記載してきた優秀な科学者だ。

本書は、著者自身の研究と新たな発見をもとに描く恐竜たちの新たな物語である。

 

私たちがよく知り今でも人気が高い恐竜といえば、地球誕生から今日まで陸生肉食動物としては最大の大きさを誇るとされているティラノサウルス・レックス(通称T・レックス)だろう。

実はこのT・レックスは、映画「ジュラシック・パーク」では主人公たちを乗せる車とカーアクションさながら俊敏に動き回る様子が描かれているが、実際はその様子から遠くかけ離れている。

CTスキャン技術を用いて、その頭骨から脳の3次元モデルを作成した結果、T・レックスはチンパンジー並みの知能を有しており、集団で群れをなして、獲物を待ち伏せして狩りをしていたらしい。

どうやら私達が思うよりもずっと知的なハンターだったようだ。

 

もう一点、陸生動物として最大級の大きさを誇っていた竜脚類の話をしよう。

竜脚類とは、長い首が特徴的なブラキオサウルスなどの恐竜だ。

竜脚類は、なぜこれほどまでに大きくなり得たのか、本書ではわかりやすく解説している。

どうやらその大きさの秘訣は呼吸の仕組みにあるらしい。

恐竜は現生の鳥類の祖先と考えられており、恐竜の中には鳥類と同じ呼吸の仕組みをもったものもいた。

鳥類の呼吸は、上空の空気が薄い環境にも適応できるくらいおそろしく効率的な仕組みである。酸素濃度が今とあまり変わらないジュラ紀において、この呼吸の仕組みは恐竜を巨大にし、ブラキオサウルスのような恐竜をも誕生させたようだ。

もちろん上記以外にも理由はある。その中には長くなった首も一役買っているようだ。詳しくは本書で確かめてみてほしい。

 

本書の楽しみ方は、巻末の索引から自分の知っている恐竜の名前を探して、そこからつまみ読みをするといいだろう。T・レックスしかり、これまでの固定観念がいい意味で壊され、誰でも立派な恐竜博士になれる。

だが、もちろん最初から読み始めることもお勧めする。若かりし頃は、ジャーナリストも目指していたという著者は文章も逸脱だ。かつて恐竜少年だった著者と研究者たちとのエピソードは本書を一層面白いものにしている。

 

恐竜の世界史――負け犬が覇者となり、絶滅するまで

恐竜の世界史――負け犬が覇者となり、絶滅するまで